被災地に畳を、広がる職人の輪

災害時に各地の畳店が協力し、避難所の床に敷く畳を無償で提供するプロジェクト「5日で5000枚の約束」が全国に根を下ろしつつあるという。「冷たい床の上で生活するのは大変。畳の上で少しでも安らいでほしい」。阪神大震災で被災した神戸の畳店主らが約3年前に呼びかけた取り組みは畳職人の共感を呼び、その輪は42都道府県の283業者にまで広がっているそうだ。
プロジェクトの実行委員長は、神戸市兵庫区の「前田畳製作所」社長、前田敏康さん。震災当時は銀行員で、住んでいた同市東灘区の寮が半壊。支援物資や励ましの言葉に助けられたという。その後、銀行を退職して家業の畳店を継いだそうだ。
プロジェクトのきっかけは東日本大震災だったという。報道で見た被災者の姿にかつての経験を思い返し、「畳店としてできること」を発案。大規模災害の被災地に発生5日以内に5000枚の新品の畳を届けることを2013年春ごろから始めたそうだ。参加業者が増えた今では6700枚以上を提供できる体制になったとのこと。
災害発生時の受け入れを円滑に進めるため、実行委は大阪市や京都府など46自治体と防災協定を締結、各地での防災訓練にも参加しているそうだ。前田さんは「東日本大震災では赤ちゃんを冷たい床に下すことができず、一晩中抱っこしていたという母親の話も聞いた。畳1枚で避難生活の痛みをやわらげることができる」と話す。こうした取り組みが行われていることを知ると、人は助け合って生きているのだということを実感する。